不動産賃貸借でも貸借対照表に資産計上?

不動産賃貸借でも貸借対照表に資産計上?

日本会計基準でのオペレーティングリースは試算ではありませんが、

貸借対照表に資産計上になる見通しです(国際会計基準では資産計上されます)。

「そんなニュース、不動産には関係ないだろう」。いいえ、大ありです。不動産賃貸とは不動産のオペレーティングリース。

だから大きく影響を受けます。

オーナーからの家賃月額100万円で5年間の借家契約で、5年間物件をお借りするだけです。

不動産の所有権は永遠の権利です。オーナーはこの店舗を永遠に使用できます。

オーナーはこの永遠の利用権利のうちの5年分だけを賃借人に売却し、賃借人側は利用権利の5年分を購入する・・・と考えるのです。

つまり、「月額家賃100万円で5年間の賃貸借契約」とは、

「5年間の利用権利を6,000万円(100万円 ×12か月×5年)で売買する契約」なのです。

「借りただけ」と思えば資産計上など考えません。 「利用権利を買った」と考えるから資産計上なのです。

賃貸借契約を結ぶと貸借対照表に利用権利6,000万円計上。一方、5年間で計6,000万円がオーナーへの支払い義務。

だからリース債権6,000万円の債務計上。

1か月が経過し、利用権利6,000万円のうち1か月使用したので100万円を償却(経費)し、利用権利 は5,900万円に。

リース債務は100万円債務返済 (オーナーへの家賃の支払い)で5,900万円に減ります。驚きの処理方法です。

これまでは国際会計基準適用会社だけの問題でしたが、日本会計基準もこのようになりそうです。

例えば、サブリース大手の東建コーポ―レーションはこのリース債務が2兆3,000億円ありますが、現在はもちろん簿外です。

これが資産計上となれば、貸借対照表に資産と債務のダブル計上。

同社の貸借対照表の債務額は 1,000億円、それが突然、2兆4,000億円になります。

その結果ROA(総資産利益率)は劇落し、無借金優良企業がある日突然借金漬けの会社になります。

「定期借家なら・・・?」、「普通借家なら・・・?」、 「借地なら・・・?」、「解約可能なら・・・?」

上記が適用するかどうかはこれからです。草案作りなどを経て2~3年後、適用開始の見通しです。

アナリストは、「見かけ上の数値の悪化だとしても、

投資家が冷静に判断できるかどうかは分からない・・・」。

大企業が対象です。その子会社でなければ中小企業には無縁。税務は関係ありません。

(日本経済新聞2019.03.09、2019.03.23)

長期修積立金に使うと・・・?

長期修積立金に使うと・・・?

アパート新築時の長期修繕積立金。

家賃から年84万円の預金を積立てでは経費になりません。

この共済を使えば18年後の修繕費1,500万円を目指して、年84万円を実質経費化が可能です。

短期解約は元金割れですが、課税は一時所得か退職所得。2分の1課税です。

元金割れでもそれまでの節税メリットがあり痛くありません。

不動産所得が修繕費で赤字になれば損益通算も可能です。

生命保険金でなく退職手当金!

生命保険金でなく退職手当金!

この「生命保険金の非課税枠」節税はもう当たり前です。

お勧めは、「退職手当金の非課税枠」。生命保険と同様に1人500万円です。

3人なら非課税枠1,500万円。 折角の非課税枠を活用します。

地主さんは「私は勤め人じゃないから退職金なんてないよ。」確かにその通りです。

そこで、退職金ではないのに、相続税の上では退職金と扱われる「小規模企業共済」が良いでしょう。

勤め人には退職金があるけれど自営業者(個人の地主家主)には退職金がありません。

そんな自営業者の老後の備えのため、引退時の退職金代りの資金を積立てる制度です。

掛金上限は7万円。月7万円つまり年84万円にしましょう。18年続けると1,500万円になります。

本人が受け取れば所得税の退職所得。

本人死亡で遺族(配偶者がいれば配偶者。指定不可)が受け取れば相続税対象ですが、

退職手当金と扱われ、 1,500万円までは相続税非課税になります。

前述生保のような1,500万円を即効全額での一時払いはできません。18年かけて預金1,500万円を非課税に転換していきます。

掛金年84万円は全額が所得税の「所得控除」です。税効果は「必要経費になる」と同じです。

課税所得(所得控除後)が900万円超部分の所得税住民税の税率は計43%です。84万円だとその43%、36万円の税額減です。

さて、相続税納税資金1,500万円を家賃収入年84万円で積立てした場合で比較検討してみます。

<銀行預金で積立てると…>

家賃収入から年84万円18年間で1,500万円。所得税(43%)645万円がかかるので残は855万円。

そして相続税。税率3割で260万円とすれば相続人に残る預金は595万円。

<この共済で積立てると…>

所得税も相続税も全て非課税。1,500万円がそっくり残り、何と2.5倍。家賃収入年84万円分は所得税、 相続税課税ナシ。

ダブル非課税。

地主・家主の不動産賃貸業(事業規模)の個人は契約OK。ただし、「アパート経営等の事業を兼業して いる給与所得者」は不可。

銀行や商工会等で契約。掛金は増減額自由です (2016年までは減額不可でした)。

つまり利益調整に堂々使えます。また解約や借入が可能です。

死亡時受取額は、半年経過後は元本割れしません。年84万円で1,500万円積立てれば実際の受取額は1,500万円でなく1,700万円程。

スゴイ節税メリットの金融商品。節税はまずこの共済月7万円から行いましょう。

退職金のダブル非課税!

退職金のダブル非課税!

生命保険の死亡保険金には相続税非課税枠があります。

相続人1人当り500万円。相続人3人(配偶者と子2人)なら1,500万円。
「生命保険に入っていますか?」に「入っていません。」なら非課税枠が残っているのであれば・・・、

銀行の定期預金1,500万円を解約して一時払い終身保険の保険料1,500万円に充てましょう。

1,500万円は死亡保険金になります。相続税課税対象だった預金1,500万円を、非課税の生命保険金1,500万円に転換しました。

相続財産3億円。配偶者控除後で相続税260万円節税。

相続人3人(子3人)だと450万円の節税です。

銀行が販売手数料狙いでかなり提案販売しているので「もうやったよ」の声も多く、

その時は、銀行では外貨建て保険のことも多いので注意が必要です。

贈与税は軽い、贈与はお得!

贈与税は軽い、贈与はお得!

相続税ゼロのお宅が贈与税20万円払うのは 「損」、無駄です。

相応の相続税のお宅は、贈与税はお得です。贈与税を支払って、相続税をドンドン減らせます。

ポイントは相続税の「限界税率」です。

贈与税には1年110万円の非課税枠があります。

贈与税をびた一文払いたくないのであれば、310万円の贈与でなく、

3年間毎年110万円贈与すれば贈与税0円で相続財産を330万円減らすことが出来ます。

あるいは、子や嫁婿や孫6人に110万円ずつの贈与なら、贈与税0円で相続財産を660万円減らせます。

この辺は工夫次第です。
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一生一度でも、毎年や5年毎でも、子孫嫁婿に、 50万円でも100万円ずつでも贈与式を行います。

「振込」は感謝が伝わらないからダメ、「現金」で手渡しします。

そして、

「何に使ってもいいけど、できれば教育資金に。 ギャンブル資金だけは禁止。」とジジババが一言。

実質は「がんばってね」、「ありがとう」という気持ちの贈与。札束を介して心が伝わり、後はお食事会。幸せな時間です。

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(以下は親から20歳以上子への贈与)

1人710万円の贈与で贈与税は90万円、税率は 12.6%。まだまだ15%未満なので、理屈上は相続財産1億円でもお得です。

相続財産5億円なら、310万円贈与によりその45%の140万円の相続税減です。

贈与税負担は20万円だけですから120万円節税 (前述の額)です。相続税の適用税率45%です。

1人1,110万円の贈与で贈与税は210万円でその税率 は18.9%。理屈上は1,110万円の贈与がお得です。

表①と表②の相続税の適用累進税率と贈与税の平均税率の比較になり、それが「払う贈与税<減る相続税」の分岐点。

ただそれは「理屈の上」です。そんな多額の贈与は理屈で正しくても「気持ち」の上で、また資金的に、厳しいものです。

だから資産家への提案は、子毎に毎年310万円贈与から。

「1,110万円贈与ですらお得…」と知れば、310万円贈与は実行できます。

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大資産家では贈与税がゼロの110万円贈与を何年続けても間に合わず、毎年相応額の贈与です。

そして贈与税税率での最初の税率10%部分は200万円。その合計で310万円。それを過ぎると税率15%です。

310万円贈与だと贈与税は20万円です(税率区切り額が表②の510万円とか710万円です)

大口資産家なら毎年各子に贈与税前提での贈与。

「贈与します」、「もらいました」と書面にし、銀行振込で証拠を残し、子が税務署で贈与税申告をします。

親による子名義借用の預金はダメです。

親が子名義の預金通帳を作成し秘密にしたまま、 親の預金から子名義の預金に毎年310万円振込、

子の名前で勝手に贈与税申告までしてしまう・・・、 それは贈与ではありません。

税務調査でバレれば、親の財産として相続税が課税されます。

子への贈与で、贈与後3年内に親死亡だと贈与財産は相続財産に加算され贈与効果は消えます。

贈与税を払って相続税を減らす!

贈与税を払って相続税を減らす!

「贈与税は重いので贈与は損・・・?」

「贈与税は軽いので贈与は得・・・?」

『払う贈与税』vs『減る相続税』の比較検討です。

<相続なら…>

相続人は子2人、相続財産1億円。相続税は770 万円で、単純平均の税率は7.7%。

<贈与なら…>

子1人に310万円贈与して贈与税20万円(何で310万円かの理由は後述します)。

「20万円もの贈与税はもったいない?」…を検証します。

310万円の贈与により相続財産は310万円減って9,690万円へ。

財産が減ったので相続税額46万円減です。46万円とは310万円の15%。

相続財産310万円減、その部分への適用される税率(限界税率-表①)が15% です。

100円財産が増えると15円の相続税増。100円財産が減ると15円相続税減ということです。だから310万円の15%、46万円減です。

減る相続税46万円-払う贈与税20万円=26万円の節税。

相続税は累進税率。財産が多い程に適用税率が高くなります。

相続財産1億円で適用税率は15%(子の数・配偶者有無でも変わる)ですが、相続財産2億円なら適用

税率30%。310万円贈与でその30%の93万円相続税が減り、贈与税20万円を払っても、73万円の節税。

5億円は45%で140万円が減り120万円の節税です。

配偶者の老後を考えたら?

配偶者の老後を考えたら?

民法の法定相続分で考えると、配偶者が自宅の土地建物を相続すると、それだけで大きな比重を占めてしまいます。

だからこそ、居住権だけを取り出して所有権から分離し、配偶者の居住の継続性を担保してきた経緯があるのでしょう。

しかし、そもそも論として配偶者と子がいる場合、

配偶者の法定相続分が1/2、子が1/2の割合が適正なのかどうかは筆者の判断能力を超えています。

ただ、婚姻後にできた財産は、夫婦の協力によってできたものです。

そこに子供の貢献はないのではないでしょうか。

だとすれば、配偶者以外の相続人の相続権など考慮せず、財産は総て配偶者に相続させる、これが本来の姿であるような気もします。

子は両親が亡くなって、初めて親の財産に感謝をしつつ引き継げばいい、と筆者は勝手に考えているからです。

配偶者居住権の評価!

配偶者居住権の評価!

それではこの配偶者居住権、相続税法上はどのように評価するのでしょうか・・・?

先ずはこの居住権を士地部分と建物部分に分け、それぞれの評価額を算出した上で、それの合計額が配偶者居住権の評価額となります。

これはちょうどマンションの評価に当たって、マンションを土地と建物に分け、

それぞれの合計額を以てマンションの評価額とするのと同様です。

まず、建物の居住権は建物自体の相続税評価額から、次の算式で計算した額を控除した額です。

控除額 = 建物の相続税評価額 ×(A)÷(B)×存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率

(A)= 残存耐用年数 - 存続年数

(B)=残存耐用年数

一方、土地の居住権は、

土地の相続税評価額 -(C)

(C)=土地の相続税評価額 × 存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率

と、ちょっと複雑です。

総じて、古い建物はあまり多額にはならず、土地も配偶者が高齢であれば、

相続財産として大きな比重は占めないように設定されています。

所有権と居住権との分離!

所有権と居住権との分離!

上記のケースで、いずれの場合も残された配偶者は、法律的に所有権を得ることが最大の狙いではないだろうと思われます。

住み慣れた家に、夫亡き後も住む事ができれば、大きな安心になるのではないのでしょうか。

その意味で所有権はないものの、自分が亡くなるまでそこに住み続けることができればいいのです。

その点に着目し、民法は完全な所有権を住み続けられる権利(配偶者居住権)とそれ以外に分けました。

その上で前者を財産価値的には小さくすることによって、配偶者が他の財産までをも取得し易くしたのです。

この民法の改正によって、相続税と言う税法でもそれぞれの権利をどのように評価するかが必要になってきました。

両者の合計額が完全な所有権と言う考え方です。

これは言ってみれば、更地を底地と借地権に分け、

この両者の合計が完全所有権である更地の価額になる事と、税法上の考え方は同じです。

配偶者居住権創設の背景!

配偶者居住権創設の背景!

配偶者居住権とは、被相続人が生前配偶者と共に起居していた土地建物に、

“相続後も配偶者が 所有権を有すること無く居住し続ける事ができる権利”です。

なぜこのような権利を創設する必要があったのでしょうか・・・?

(例)例えば次の事例で考えてみましょう。

遺産が居住用の不動産2,000万円と預貯金3,000万円、相続人は妻と子の2人の場合です。

(ケース①)

法定相続分で財産を分割しようと考え、合計5,000万円を1/2ずつ相続する前提です。

妻は不動産2,000万円を取得すると預貯金は500万円になってしまいます。これだけでは残された人生の生計費としては心配です。

預貯金が少額なのは、不動産が法定相続分である1/2の大半を占めてしまうためです。

(ケース②)

こんなケースも考えられます。

再婚の夫婦で、前妻の子が2人いるようなケースです。

再婚後、比較的短期間後に夫の相続があった場合でも、妻には1/2の法定相続権が生じます。

どれ程妻である期間が短くても、入籍していれば妻は妻。それを前妻の子は快く思わず、財産分けでもめる事はよくあることです。

それを理由に入籍を諦める方も、これまでにはたくさんいらっしゃいました。

それもこれも、不動産の所有権が財産の内に占める割合が大きいためなのです。