法人だけに認められている選択!

法人だけに認められている選択!

前記事の考え方は、個人と法人で基本的には異なることはありません。
しかし、大きくその取り扱いが異なるのは、資本的支出となった場合の取り扱いです。
資本的支出となれば、減価償却と言う手続きで経費化して行く訳ですが、
個人の場合、強制償却と言って減価償却することが義務付けられています。
それに対し法人は減価償却をするかしないかは、その法人の任意でまた継続することも強制されていません。
従って、減価償却を通じて利益調整をすることも可能なのです。

修繕費と資本的支出の区分!

修繕費と資本的支出の区分!

それでは具体的にはどんなものが修繕費で、どんなものが資本的支出になるのでしょうか。

所得税法や法人税法と言う税法そのものに、それについての詳細な規定はありません。

しかし、各税法には基本通達と言って税務職員が税務上の判断をし、執行する際のルールがあります。

それらの通達は広く公表されていて、誰でもが手軽に参照する事ができるようになっています。

両税法とも通達でほぼ同様の規定をしていて、その概要を抜粋、整理すると、まず資本的支出については、

1) 避難階段の取り付け等

2) 用途変更のための模様替えや改造、改装等

また、修繕費に含まれる費用としては、

1) 建物の移えい又は解体移築をした場合。但し、 解体移築の場合には、旧資材の70%以上が再使用でき、

そのまま従前と同一の規模や構造の建物を再建築する場合に限る。

2) 機械装置の移設

3) 地盤沈下した土地の原状回復費用

4) 建物、機械等が地盤沈下により海水等の浸害を受けたために行う床上げ、地上げまたは移設 の費用

5) 現に利用している土地の水はけの改良等のための砂利、砕石等の敷設や補充のための費用

等々となっています。

その他にも、一つの修理、改良等の費用が20万円未満の場合、

その修理、改良等が概ね3年以内の期間を周期として行われることが、明らかな場合も修繕費として認められます。

が、実務では個別の事情もあり、これで総ては解決できそうにありません。

そこで、修繕費か資本的支出かが判然としない場合に限って、一つの基準としてその金額が60万円未満であれば、

修繕費として扱ってよい事になっています。

また、もう一つの基準として、7:3基準と言うものもあります。

これは継続して行われることが前提ですが、両者の峻別が困難な場合、支出した金額の30%を修繕費とし、

70%を資本的支出とするものです。

修繕しても修繕費にならない?

修繕しても修繕費にならない?

賃貸建物の修繕をしても、修繕費として経費にならない、などと言うことが一体あるのでしょうか。

厳密に言うと、決して費用にならない訳ではないのですが、一時に経費化できない場合があるのです。

これを税務の用語で“資本的支出”と言うのですが、 修繕の効果が長期にわたるため、

経費化するのにも時間を掛ける必要があるのです。

具体的には減価償却と言う手続きで、数年から数十年かけて費用にしていかなければならないのです。

例えば建物の建築費が1億円かかったとします。

引き渡しを受けた時にその1億円が直ぐに経費になるのでしょうか・・・?

答は勿論NOで、建物の耐用年数に応じて経費としていくのです。

これは一度建物を建築すれば、鉄筋であれ、木造であれ、

何十年もの長期にわたって建物としての効用を果たしてくれるからです。

決して建物代金を支払った時だけで、その効用が失われる訳ではないのです。

減価償却とは、時の経過に伴って、資産が劣化する部分を税法のルールに則って計算をするものなのです。

基本的には簡易な修繕で金額的にも重要でないものは支払時点での修繕費に。

逆に、金額的にも多額で、その後も比較的長期にわたって機能を維持できるものが資本的支出となります。

修緒費か減価償却か、それが問題だ!

修緒費か減価償却か、それが問題だ!

建物も人間と同じで、時の経過と共に不具合が生じてきます。
屋根や壁にヒビが入り壁材や塗装が剥がれたり雨漏りがする等々と言った症状が出てくるでしょう。
そうなれば待ったなしで修繕が必要ですが、軽易なものから建て替え費用に匹敵するほど多額のものまで色々です。
早目に経費にしたいものの果たして税務の取り扱いは・・・?

修繕費か?減価償却の対象か?

修繕費か?減価償却の対象か?

これに対し経費はいささか面倒です。最も頻繁に生じる問題は修繕費です。

税務上は修繕費となれば、支払時に全額が経費となります。

それに対し税務用語では「資本的支出」と言いますが、支払時に全額が経費にならないものがあります。

いったん建物や設備等のように資産として計上し、その後何年かに分けて減価償却の手続きを通じて費用としていくものです。

減価償却とは、例えば建物本体で考えた場合、建物が経年劣化することによる価値の減少分、と考える事ができるでしょう。

つまり、建物を取得するための支出は、将来の収入を生み出すための前払いと考えるのです。

そのため支払時に全額を経費化するのではなく、耐用年数を考慮した期間で按分すると言う手続きなのです。

この様に考えると、支払時に全額を経費化することが妥当でないことは理解ができても、実務はさらに複雑です。

総論としては判断ができても、個別具体的には修繕費との峻別は容易ではないからです。

ここでその詳細は述べませんが、あえて一言で言えば、その修繕によって寿命が延びるものは資本的支出と考えていいでしょう。

なお、税法では上記のような考え方とは全く別に、各種の特例を設けて早期の償却を促す制度が用意されています。

これは偏に政治的政策的配慮に基づくものであるた め、素人判断は極めて危険であることに注意が必要です。

ココイチの減価償却は×!

ココイチの減価償却は×!

カレーチェーンの「CoCo壱番屋」。

創業者は音楽ホールを運営する音楽界のパトロン。

億円単位にもなるバイオリン名器「ストラディバリウス」等を若き音楽家へ貸与します。(以下の金額は一部推定仮定)

さて、そんなバイオリン30丁を20億円で同族会社に売却します。

ポイントは減価償却。楽器の法定耐用年数は5年です。しかし、ストラディバリウスなら17-18世紀の作。つまり5年経過です。

簡便法耐用年数はベンツ同様2年。償却費20億円で赤字20億円。

さて、赤字活用で相続税対策です。

売買代金20億円のうち10億円が未払いのままで、言わば創業者から会社への貸付金状態です。

その10億円を放棄。会社は債務免除益10億円計上。しかし、赤字20億円で相殺でき、法人税ゼロ。

個人財産20億円分を法人に移しました。しかし、売買代金相当(貸付金)が相続財産になります。

その貸付金も放棄で消しました。相続税はドンと減るはず・・・。

税務署は減価償却費の否認。

「楽器も貸与して(事業活動として)いれば減価償却できる!」と税理士から説明を受けた・・・。

普通の音楽家が使用する普通の楽器ならその通りでしょう。

しかし、法人税施行令は「時の経過によりその価値の減少しないものは償却資産にならない」。

美術品や骨董品等のことです。このバイオリンもおなじです。だから償却費20億円はゼロに・・・。

そして、20億円の赤宇も消減し、債務免除益は相殺相手消滅で利益として残り法人税課税です。

「国税局は…いずれの楽器も減価償却の資産にならないとして、約20億円の申告の誤りを指摘した。(朝日新聞)」

追徴課税は過少申告加算税を含め5億円。

更に想定外の贈与税課税です。

債務免除10億円により会社純資産が10億円分増えます。それは株式の株価評価が上がること。

株主が子で、 会社に債務免除したのが親なら「みなし贈与」課税で贈与税(相基通9-2(3))。

「同族会社の株主である夫妻と親族5人の計7人が株価上昇で利益を得たとして課税対象になり・・・、

計約7億円の申告漏れ追徴課税は過少申告加算税を含め約4億円」(朝日新聞2019.6.6)