共有を回避するための予防策!

共有を回避するための予防策!

以上、今まで見てきたように、信託によって共有を解消できる可能性は確かにあるのです。

しかし、基本的には 他の共有者の協力が必要であることもお分かり頂けたのではないでしょうか。

逆に言えば、その協力が得られない場合、共有状態を解消することも、また困難なものになると言うことなのです。

それでは、「とりあえず共有」にしないためにはどうしたらよいのでしょうか。

それは、相続に当たって財産を分割するのを、分割する当事者に任せないと言うことです。

つまり、生前に遺言書を作成し、財産の分割方法を予め指定しておくことなのです。

ご自身の財産であるからこそ、それをどのように相続させるのか、その方に総ての決定権があることを、肝に命じて欲しいのです。

それこそが財産を所有する方が、次代に引き継がせるための責務なのではないでしょうか。

共有解消法としての信託!

共有解消法としての信託!

共有状態の解消には、

1) 共有物の分割

2) 交換

3) 売買(売却)

4) 贈与

5) 信託

の5手法が考えられます。

その中で本日のテーマである信託ですが、信託とは信頼できる者に財産を託し、契約次第では運用のみに留まらず、

売却・処分までをも依頼する法律行為です。

簡単に説明します。

登場人物は3人。

① 自分の財産を託す人(「委託者」と言う)

② その財産の運用や処分等までを引き受け、実行する人(「受託者」と言う)

③ その財産から生じる利益を享受する人(「受益者」と言う)

の3人がそれです。

信託をすると不動産であれば登記簿上は②受託者名義となりますが、その利益を享受する人はあくまで③受益者。

従って、①委託者以外の人が③受益者になると、①委託者から贈与があったものとされ、贈与税が課税されてしまいます。

そのため基本的には①委託者=③受益者で信託を行います。

ではこの信託が何故解消法になり得るのでしょうか。

例えば➀委託者Aが高齢のため共有者の一人として所有する収益物件の管理が困難になってきたとしましょう。

そのままでは➀委託者Aは他の共有者に自己の意思表示もままならず、共有状態の維持も困難になってしまいます。

そこで、➀委託者Aは自己の持ち分を息子であるBに信託します。

するとBが②受託者としてAに代わり、契約に定めたことは何でもできるようになります。

ただ、Bはあくまで②受託者に過ぎないため、その収益自体はAのもの。

贈与税が課税されないよう、①委託者=③受益者としてあるためです。

もちろん、これだけでは共有の解消にはなりません。

しかし、➀委託者Aに代わって他の共有者にモノを言い、 行動していく事で、共有状態を活性化させ、

場合によっては持ち分の買い取りや売却を促すことにもなり得るのです。

その意味では、信託も共有解消の一方法と考えられるでしょう。

共有の何が問題なのか?

共有の何が問題なのか?

では、共有になると何が問題なのでしょうか。

最大の問題点は、原則として全員の合意が必要なことでしょう。

原則として、と言ったのは、他の共有者と意見が異なった場合、自分の共有持ち分だけを売却や処分ができるからです。

この行為に全員の合意は必要ありません。 完全な単独行為です。

ただ、もしその持ち分が性質の良くない部外者に移転したら、とんでもない状況になる恐れもあるのです。

そうでなかったとしても、そもそも全員の合意と言うのはなかなか難しいものなのです。

ただし、同じ共有でも親と子の場合には、親は子供に有利な事を考えてあげることも多いため、喜んで讓歩もしてくれるでしょう。

しかし、これが兄弟姉妹の場合、お互いに独身であればいざ知らず、それぞれに家庭があれば問題は複雑です。

まさに兄弟は他人の始まりとばかり、醜い争いのもとにもなってしまいます。