取引事例のない地域の固定資産税評価額は?

取引事例のない地域の固定資産税評価額は?

「地方では、基準年度の固定資産税評価替えにおける標準宅地評価において、

いくら探しても適切な取引事例がない、どのように鑑定評価していいのかと困惑の嘆きの声がよく聞かれる。」

過疎地では売買実例がなく、固定資産税評価基準での時価(宅地価格)が求められません。

しかし、固資税評価額は必要。

比較事例の場所(遠く)や時間(過去)を拡大します。

更には自然の価値や行政サービスを受けるといった価値に目を向け評価するしかなくなります。

そもそも、取引事例がなくて市場性はあるのか・・・?

全国で取引事例のない地域が増え、工夫をするしかありません。(月刊不動産鑑定2019.6)

広大地の問題点!

広大地の問題点!

結局はつぶれ地が生じるかどうかの判断なのです。

それをどうやって当局に理解してもらうのか。

実際は、広大地の適用ができそうな場合、その敷地をどのように区分けし分譲するのか

業者の協力を得て『開発想定図』と言う図面を添付するのです。

実は各自治体には開発要綱と言って、乱開発や公共設備の遅れを防ぐためのルールが明文化されています。

そのルールに則って開発をすると、前述のような開発想定図になるとの説明するのです。

それによると、このような道路が必要でつぶれ地が生じ、だから広大地に該当すると言う筋書きです。

ただ、『開発想定図』は開発要綱にさえ抵触しなければ、様々な区分けが考えられます。

決して方程式を解いて正解が一つと言うものではありません。

つまり、当方は広大地に該当させようとして道路を入れた想定図を出しても、

税務署はそれを否認しようとすれば、別の想定図を考えて道路を入れない区分けを考えるのです。

当然のことながら税務署との見解の相違は頻繁にあり、争いの種は尽きません。

中にはどう見ても実状にそぐわないものもあり、極端なのが平成18年3月28日の東京高裁判決の下記の想定図です。

税務当局の言うとおり、895平方メートルの土地を図のように5つに分れれば、道路は不要だから広大地ではないと言う考え方を支持しています。

特に(5)は奥行42m弱、もはや言葉もありません。

そこで登場したのが「地積規模の大きな宅地」です。今度の条件はいたって単純明快。

詳細は省いて概要だけ述べれば、

(a)三大都市圏では500平方メートル以上の土地で、

(b)普通商業・併用住宅地区及び普通住宅地区に所在し、

(c)容積率が400%(23区は300%)未満の土地、と言うものです。

これなら東京近辺にある500平方メートル以上の土地なら、該当するものも多いのです。

そこに建物が既に建っていようといまいとお構いなし。開発図面の添付も不要です。

ただし、規模格差補正率と言って、通常の評価額にこの補正率を乗じて計算するのですが、広大地よりはその評価額は低めになります。

500平方メートルで20%減、1000平方メートルで22%減と言ったところです。

しかし適用できる箇所は従来の広大地に比べれば格段に増えるはず。

ちょっとした地主さんなら相続税は大幅な減額になるでしょう。

ただ、これにより当局との見解の相違がなくなり、結果的に納税額が減少したら、当局はそれを放置してくれるのでしょうか。

今年1月以降の相続についての改正なので、現時点ではどれ程税収が減少するか判明していません。

もし大幅な税収減が生じれば、この改正も即中止、再改正になるかも、です。

国の税制はいつも後出しじゃんけんばかりですから・・・。