長男が6月に死亡。そしてその3ケ月後に親が死亡。
「全財産を長男に相続させる」との親の公正証書遺言が残されました。
親の配偶者はすでに死亡、子は2人。3ケ月前に死亡した長男、そして長女です。
長男には子(親から見れば「孫」) が3人います。
民法第887条「被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。」
孫3人は相続人(代襲相続人)となります。
ここで法定相続分は長女1/2、孫3人各1/6となります。
図をご覧ください。さて、「全財産を長男に」の遺言はどうなる?
民法985条「遺言は遺言者(親)の死亡の時からその効力を生ずる」。
つまり「全財産を長男に相続させる」とある遺言書は親死亡の時に効力が生じます。
その効力発生時には長男はすでに死亡。もはや存在しません。
民法994条「遺贈は遺言者(親)の死亡以前に受遺者(長男)が死亡したときは、その効力を生じない」。
それなら親のこの遺言も無効じゃないの・・・と思います。
さてここが微妙です。「遺贈」ならこの民法の規定により当然に無効です。
遺贈とは遺言書で財産を与える行為です。
しかし親の遺言書は、「長男に遺贈する」でなく、「長男に相続させる」と書かれていました。
「相続させる」とは「そのように相続手続きをしろ」との遺産分割方法指定です。無効となる「遺贈」ではないのです。
孫3人は「全財産を長男に相続させる」の遺言書に基づき代襲相続人として全財産を相続する(長女に遺留分はありますが)といいます。
一方で長女は遺言書は無効だといいます。そして争いに・・・。