会社を買っちゃいました。
会社所有土地を売買原因の所有権移転登記で買主に移しました。
会社を買ったのに土地を買ったと処理。買った会社は放置。
随分前、そんな実例に遭遇し、唖然としました(結末は知りませんが・・・)。
先月号のユニゾの当初TOB案のような超格安M&Aなら、法人税負担を簿外債務と考えて予算化することもあるでしょう。
M&Aは宅建業法の範囲外で、仲介料相場は3%でなく5%・・・?
コンサルや仲介なら損害賠償請求回避のため、含み益・税務・スキーム等への説明が必須です。
会社を買っちゃいました。
会社所有土地を売買原因の所有権移転登記で買主に移しました。
会社を買ったのに土地を買ったと処理。買った会社は放置。
随分前、そんな実例に遭遇し、唖然としました(結末は知りませんが・・・)。
先月号のユニゾの当初TOB案のような超格安M&Aなら、法人税負担を簿外債務と考えて予算化することもあるでしょう。
M&Aは宅建業法の範囲外で、仲介料相場は3%でなく5%・・・?
コンサルや仲介なら損害賠償請求回避のため、含み益・税務・スキーム等への説明が必須です。
不動産会社トーセイは物件所有中小企業へのコンサルを開始。
トーセイは首都圏9物件所有の中小企業を買収、4物件所有する企業を傘下に。
オーナーが株式処分で任せれば「オーナーの最終的手取りは2倍以上」、それでいて「市場価格より2~3割安い価格で取得できる」(日経産業2018.6.4)
土地を10億円で売却。法人税は30%の3億円で残は7億円(この段階が現金だけ保有の無借金会社)。
これはまだ法人のお金。株主個人が欲しいのは個人のお金です。
個人のお金にするには会社を清算し7億円を個人に分配。所得税等50%で税金3.5億円。残るは3.5億円。
土地でなく会社(株式)を10億円で売却。株主に直接お金が入り、個人の株式売却益への所得税は20%なので税金は2億円。
残りは8億円。手取りは倍。
トーセイは「不動産M&A」などの仕入れ手法も活用しながら多様な収益物件・開発用地の取得を進めます。(日刊不動産経済通信2019.1.17)
半蔵門駅直結のビル。敷地567㎡は複数の個人所有で、建物7006㎡は法人所有。2017年に三菱地所が買収します。
土地は売買。建物は株式売買(M&A)のよう。登記簿をみると土地は「売買」で所有権移転。
驚くのは建物です。登記原因「剰余金の配当」で三菱地所に所有権移転しています。
三菱地所が全株式を買収して、その会社から建物現物を配当として受けたのでしょう。(日経不動産マーケット情報2017.11)
法人登記を見ると、三菱地所関係者らしき人(登記からは不明)が代表者になり清算を勧めました。
会社を解散清算する前に、株主の三菱地所は配当を受けたのでしょう。現金配当ではなく建物現物での配当を。
このケースで借地権の有無は不明ですが、借地権有りなら借地権も「剰余金の配当」として三菱地所に渡ったはず。
なお100%子会社(全株を買い取ったとすれば)からの受取配当は法人税非課税(益金不算入)です。
不動産M&Aでの個人株主の売り側は比較的問題なし。苦労はデューディリ(買収監査)や少数株主から株式買い集め等です。
個人所有ならもう売却済みのはず。
株式分散で複雑事情法人所有ゆえに売れずに残りました。
株主は高齢化し、「私達の世代で解決しなくては」。
廃業しても跡地は法人所有のままで法人名義の賃貸ビルだったりします。
有利不利とか損得とかでなく、出口はM&Aしかないのです。
財産は現金10億円だけで無借金の会社。多額の現金、 残念ながら大株主でも自由に使えません。
配当や役員報酬として受け取れば膨大な所得税。
役員でない少数株主は役員報酬もなし。
株式分散での会社運営は極めて面倒。
だから「現金10億円の会社を現金8億円で買います」提案が通ります。
8億円から譲渡税20%を払えばあとは自由なカネ。
何億円を失っても、「やっと解決できた」。
現金で2割引なら不動産は4割引。チカラ関係次第ですが、出口は不動産売買は不可、M&Aしかありません。
銀座や日本橋の老舗店舗ビル、広大な鋳物工場や鉄工所跡地等、古い法人が所有する優良物件。
100年前、先祖が個人資産をつぎ込んだ法人です。
今、株式は兄弟に、そしてイトコに分散です。株式配当は雀の涙、しかし相続評価は高く、相続税が襲います。
東京駅前、丸ノ内ホテルは1924年開業。三菱地所の東京駅前再開発エリアに場所を移しエリアの土地建物一部を保有。
三菱地所はl961年に株式を少数保有し、3割にまで増やし、2018年に丸ノ内ホテルに対しTOB(株式公開買付)、
8割まで買収。社長は三菱地所関係者に。
多数多様な株主がいたのでTOB形式なのでしょうが、実質は不動産M&A。
ある個人株主(0.35%保有)は売らないとか、大株主の子を非常動役員にするとか・・・と、実態は同族会社。
(日経産業,日刊不動産経済通信各2018.2.26)
株式会社丸ノ内ホテルは非上場ですがユニゾ同様にTOBです。
67%又は90%以上買収すれば残余少数株主の締め出し強制買収(スクイーズアウト)も可能です。
三菱地所はまさか 手荒なことはしないでしょうけれど。
丸ノ内ホテルだけでなく、日本中にある「株式会社どこどこ駅前ホテル」でも同じ問題を抱えています。
あるM&A。
株式売買契約書には、「以下は真実正確と表明保証する。その違反により損害があれば・・・賠償する」
「本件契約書締結日以前の法人税その他公租公課につき適正な申告納付を行った」との表明保証もされて
1億5000万円でM&Aが成立します。
半年後に税務調査。法人税消費税の修正申告と加算税とで1億4261万円(判決から推定)。
買主はこの申告漏れを表明保証違反として売主に損害賠償請求。
売主は「指示されるまま契約しただけ。表明保証なんか知らない。」
「買い手はデューデリ精通。監査して株価算定したんだから分かってて当然だろ」。
興味深いのは、損害額を裁判所がどう認定したかです。
M&A前(この租税債務の存在を前提としない)の会計士による価格査定報告書は純資産法とDCF法の併用で
9714万円から1億1873万円の間。
申告漏れ後に別会計士による価格査定報告書では純資産法とDCF法とを平均してマイナス639万円。
裁判所は、「(報告書によれば)契約当時の株式価格は0円であり、この租税債務が存在していないとした株式の価格は、
少なくとも報告書価値下限9714万であると認められる(東京地裁2018.3.28)」
買い値は1億5000万円。でも買った時の会社価値9714万円。
しかし申告漏れ分が簿外債務だったので本当の会社価値は0円(マイナスにはならない)。
損害賠償額は9714万円。(銀行法務212019年8月号)
一方で企業は廃業し、減り続けていきます。
ですから、今後は「企業向け保険」よりも「相続保険」へ転換が必要です。
経営者はどんどん消え、「相続ビジネス」と「M&Aビジネス」が大流行。
書店には「サラリーマン大家」の本は少なくなり、「サラリーマンは300万円で会社を買え!」類の本が平積みされるでしょう。
「サラリーマン大家ブーム」は終わり、「サラリーマン資本家ブーム」到来です。
ターゲットは後継者のいない中小零細企業や商店 です。