不動産特定共同事業法(「不特法」)の改正です。
資本金1億円以上が条件だった不動産小口化ビジネスが、資本金1,000万円の宅建業者に解放です(条件あり)。
国交省が目指すのはこんな事例です。
10年前に京都の古い町屋3棟が証券化されました(不特法でなく、金融庁の資産流動化法)。
事業費総額1億500万円、投資家200人から優先出資1口当り10万円で5,500万円集め、年3%配当します。
地元業者等が信用補完の為の劣後出資1,000万円、残4,000万円は銀行ローンです。
これで築古町屋3棟を順次取得し、再生し、店舗とし、賃貸する手法です。
「投資家の9割以上」が近接の住民で、「投資家の約半数が事業を応援したい、地域を良くしたいという理由」で出資し、「収益性を投資の動機として挙げた者は1割に留まる。
(国交省不特法資料)
つまり、“儲けるためじゃない!志ある資金!”というわけです。
空き家や古民家のゲストハウス化、駅そば老朽空きビルのリノベーション再生、と地域の再生活性化事業を小口化で広げたい。
国交省は地域の宅建業者に、そんな地域創生を担わせます。
「志ある資金を活用し、不動産ストックを活用して地方創生につなげる取組。空き家や空き店舗等の再生活用化事業に地域の不動産事業者等が広く参入できる」
国交省の仕組みとしての「小規模不動産特定共同事業」の新設です。
5年間で参入800社、投資500億円を国交省は目標とします。2017年12月から開始です。
資本金1,000万円(従来は1億円)以上の宅建業者で、会社の負債額が資産額の10%以下(借金が少ない)、専門家がいる等々の条件で、届出(従来は許可)でOK。参入ハードルをガクンと下げました。
国交省が目指すのは、「1億円のアパートやマンションの1口100万円共同投資ビジネス」ではなく地方創生です。出資を募り、ボロ物件を仕入れリノベ賃貸や転売。もちろん単なる貸家投資も・・・。更に海外不動産投資もOK。
従来の不動産小口化は「地方創生」でなく「不動産投資」でした。だから投資家保護です。
だから資本金1億円以上を条件にして許可まで必要にします。投資家を守るためには性悪説です。
今回の小規模新制度は性善説です。
出資者1人100万円まで総額1億円までの小規模なら「保護に欠けるおそれがない(改正不特法2⑥)」と唐実に定義しました。
だから資本金1000万円でOK、届出でOKとハードルを下げます。
地元思いのイイ人ばかり集まるし、儲けが投資の動機なんかではない。
だから地元業者に音頭を取らせても大丈夫だというわけです。
出資総額1億円の空き家再生事業。資本金1,000万円の地元不動産業者が胴元で金集めします。
匿名組合方式で(任意組合も可)、地元の投資家から1口100万円70人7,000万円集めました。
それは年5%を優先配当する優先出資。
胴元は3,000万円の劣後出資。見事に1年後に2億円で転売でき利益1億円です。
優先出資への分配は350万円(7,000万円×年5%)だけ。残利益9,650万円はどう分配・・・?
劣後出資を出した胴元に全額分配・・・?
ゼロ金利下なのに5%もの高利の社債と考えれば、一般投資家は5%だけで満足して当然だというわけです・・・?