子(相続人)は親(被相続人)の財産に属した一切の権利義務を承継します(民法第896条)。
それが相続。子が親から一切合財を引継ぐ。つまり、権利 関係上では父と子は同一人物です。
「相続させる」という親の遺言で土地を相続します。
民法が同一と断言するからは相続登記未了でも 「私の財産だ」。
つまり所有権移転登記しなくても 「私の土地だ」と第三者に対抗できます。
(最高裁平成14.6.10)
なお相続させるとの遺言でなく、遺産分割では、法定相続分を超える部分については登記が必要で す。
(最高裁昭和45.1.28)
さて、土地を買いました。「相続」でなく「売買」で す。慌てて登記します。なんで慌てるか?
その理由は、「相続」と違って「売買」は登記をしな いと第三者に対抗できないからです。
売主が二重売買して第三者に先に登記されたら、その土地を取り戻せません。
父は土地について「長男に相続させる」との遺言を残しましたが長男はずっと未登記のまま。
無権利の次男が長男の実印を持ち出し、勝手に自分名義にして第三者に売却しました。土地登記は第三者名義になりました。
長男は「売買」でなく「相続」での取得なので第三者に対抗できます。
第三者の登記は抹消され長男は土地を取り戻します。
さて、このルールは分かりにくいので民法が改正されます(2019年7月の相続から適用)。
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【改正民法第899条の21】
相続による権利の承継は、遺産の分割によるものかどうかにかかわらず、相続分を超える部分については、登記、登録その他の対抗要件を備えなければ、第三者に対抗することができない。
2.前項の権利が債権である場合、遺言の内容(分割の内容)を債務者に通知をしたときは、共同相続人のできる全員が債務者に通知をしたものとみなして適用する。
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「相続させる」との遺言でも、長男が対抗できるのはその相続分の1/2までになります。
相続分を超える部分は対抗できません。第三者の登記では持分 1/2だけが抹消されて長男に戻ります。
これまでは相続未登記で放置しても権利は全て守られました。
これからは相続登記しないと危ないということになります。
不動産は登記ですが、この場合で債権(預金債権や貸付金)は債務者(預金なら銀行)に通知です。
注意!)2019年7月の相続から適用です!