医薬分業のお蔭で高家賃が実現!

話は変わって、ある高血圧等の処方のお話です。

院内処方(診療所等)だと1,390円、院外処方(診療所等+薬局)だと6,080円。

その差4,690円。これが医薬分業の社会的コストで、薬局経営のうまみの源泉です。

大病院の前には「門前薬局」と呼ばれる薬局の群れがあります。

処方せんを手に病院からでてくる患者は、最も近い薬局に次々吸い込まれます。

門前薬局をビジネスとして考えるとこれほど楽な商売はありません。病院の目の前に店さえ出せば自動的に患者が入ってきます。まさに、立地が全てです。

病院密集地の御茶ノ水駅前の交差点、4つの角のうちの3つの角に「日本調剤」。同一の会社の薬局が3つです。どちらの方向から歩いてきた客も全て捉えます。

さて、慶応大学病院は「院内処方」を続ける数少ない大病院です。だから近隣に薬局はわずかです。しかし、いつ院外処方に変わるかも知れません。

慶応大学病院はJR信濃町駅前、横断歩道を挟みほぼ駅直結。門前薬局のダントツ立地は限られます。駅ビル1階には「日本調剤」の薬局がありました。しかし、2013年12月に休院して4年経ちます。(「日本調剤」は駅前ビルの小さな薬局を買収したので)。そして高家賃のはずの駅ビル1階を、4年間借りたままだと言います。

いつ慶応大学病院が「院内処方」から「院外処方」に転換してもいいように、高額家賃を無駄に払い続けます。おそらく、それでも採算が合うビジネスなのでしょう。

門前薬局の好立地の家賃は、ずば抜けて高額です。

個人経営等の好立地小規模薬局は、立地目当て(店舗賃借権引き継ぎ等)で高額M&Aされていきます。

その門前薬局にも危機が訪れそうです。

病院敷地内の薬局店舗が2016年に解禁され、病院が敷地内店舗を貸し出しします。

家賃の入札、また処方せん枚数比例の家賃。高額家賃店舗は病院のモノ。「門内薬局」です。

(週刊東洋経済2017.11.11)

そうなれば、大病院周辺の薬局店舗のテナントビル、どうなるのか注目しましょう。