あるM&A。
株式売買契約書には、「以下は真実正確と表明保証する。その違反により損害があれば・・・賠償する」
「本件契約書締結日以前の法人税その他公租公課につき適正な申告納付を行った」との表明保証もされて
1億5000万円でM&Aが成立します。
半年後に税務調査。法人税消費税の修正申告と加算税とで1億4261万円(判決から推定)。
買主はこの申告漏れを表明保証違反として売主に損害賠償請求。
売主は「指示されるまま契約しただけ。表明保証なんか知らない。」
「買い手はデューデリ精通。監査して株価算定したんだから分かってて当然だろ」。
興味深いのは、損害額を裁判所がどう認定したかです。
M&A前(この租税債務の存在を前提としない)の会計士による価格査定報告書は純資産法とDCF法の併用で
9714万円から1億1873万円の間。
申告漏れ後に別会計士による価格査定報告書では純資産法とDCF法とを平均してマイナス639万円。
裁判所は、「(報告書によれば)契約当時の株式価格は0円であり、この租税債務が存在していないとした株式の価格は、
少なくとも報告書価値下限9714万であると認められる(東京地裁2018.3.28)」
買い値は1億5000万円。でも買った時の会社価値9714万円。
しかし申告漏れ分が簿外債務だったので本当の会社価値は0円(マイナスにはならない)。
損害賠償額は9714万円。(銀行法務212019年8月号)