ただ譲渡したときの課税がまだ不明確。
「将来売るかも」、「収用されるかも」なら悩みます。
配偶者居住権は、「終身・・・死ぬ迄」が原則ですが「有期」も可。
「期間15年有期」だと前記例「75歳終身(平均余命15年なら)」と同じで40%。
期間15年なら母生存中でも15年で、居住権消減で完全所有権に。
「15年間は譲渡しない覚悟」があれば先が見え確実な節税手法です。5年や20年も可能です。
ただ譲渡したときの課税がまだ不明確。
「将来売るかも」、「収用されるかも」なら悩みます。
配偶者居住権は、「終身・・・死ぬ迄」が原則ですが「有期」も可。
「期間15年有期」だと前記例「75歳終身(平均余命15年なら)」と同じで40%。
期間15年なら母生存中でも15年で、居住権消減で完全所有権に。
「15年間は譲渡しない覚悟」があれば先が見え確実な節税手法です。5年や20年も可能です。
配偶者居住権を選ばずに、共有を選んだ税理士は、損害賠償請求されるようになるかも・・・。
ただ、母より先に子が死ぬと損
・・・「所有者(子)の相続開始時において同様に評価することが考えられる」(改正税 制のすべて)・・・
配偶者居住権は時の経過と地価動向で変動します。
その時に3,000万円ならば、居住権付所有権は6,000万円でなくて7,000万円で相続税課税です。
民法改正要綱には「財産的価値アリ」。
しかし、一身専属権だからと民法1032条③は「配偶者居住権は譲渡できない」。
「例えばホーム入居用のため母子一括1億円で讓渡できるか・・・?道路拡幅で強引に1億円で収用されたら・・?」
配偶者には切実な問題です。
法制審議会では激論。当初は「譲渡できる」、それが「所有者(子)に買取り請求できる」、最終「譲渡することができない」ヘ。
法制審の最終での考え方は・・・?
「配偶者居住権も一つの債権ですので放棄が可能です。 所有権全体を譲渡したい場合には、
配偶者が放棄することによって配偶者居住権を消滅させた上で、負担のない所有権全体を移転することができます。(法制審議事録)」
「放棄の条件として・・・金銭の支払いを受ける」も可(法務省担当官解説本)。
例えば「子は母に解決金3,000万円を払って放棄を受け (「譲渡」ではない)、子の完全所有権にして1億円で売る・・・」。
これなら一括1億円売却と実質は同じ。
問題は税。子にはどう課税されるか。 無償放棄なら贈与税。
でも前述通達は著しく低い対価でなければ=適正対価(3,000万円)を付ければ、贈与税なし。
(現行税制・・・不動産の場合、このような対価あり贈与(負担付贈与)での贈与税は路線価等でなく時価基準での差額への贈与税。
不動産扱いされるのか?)
また母にはどう課税されるか。3,000万円で不動産売却と同じとされ母へ議渡税か? (雑所得?総合議渡?)
(現行税制・・・不動産の場合、負担(3,000万円払うとの負担)付贈与なら(3,000万円で) 売ったとして母に譲渡税。)
なお、配偶者居住権は譲渡不可なので未差押物件なら、差押えできません(議事録)。詐害行為には便利に使えます。
①共有持分には相続税課税
②居住権なら相続税課税ナシ。
配偶者居住権は配偶者(母)が死ぬと消減します。
子所有の所有権は居住権付とのタガは消減し、自由に1億円で売れます。
6,000万円が1億円に跳ね上がるのです。
借地人が勝手に立退料ナシで立ち退き、地主所有の貸地が突然に更地になったのと同じです。
子はいわば「配偶者居住権消減益4,000万円」を得たのです。
共有持分なら相続税課税。配偶者居住権消減益なら課税ナシ。
所有者との合意や配偶者の放棄により配偶者居住権が消減した場合で、
対価の支払いがなければ所有者へ贈与税です(著しく低い対価ならその差額へ贈与税)。
死亡や期間満了での消滅なら贈与税は課税しません(2019年7月8日公開:改正相続税法基本通達9-13の2)
「配偶者はその死亡による配偶者居住権の消減の時に、
当初設定した配偶者建物の使用収益の完了に至ることから移転しうる経済的価値は存在しないと考えられ、
「みなし贈与」の適用もないと考えられます。」改正税制のすべて(財務省主税局)
後妻&前妻の子にはピッタリ。実の子なら本来は不要の制度。
でもそれを節税に使うのは自由です。
「前妻の子」を「実の子(母子同居の実の子も可)」と読み替えて下さい。
同居ならば母子ともに小規模宅地特例は使えますが、ここでは無視します。
相続税の配偶者控除狙いで妻(実の母)が1億円相続します。
①従来は、共有持分40%、4,000万円と預金6,000万円とで1億円。
②新制度、配偶者居住権4,000万円と預金6,000万円とで1億円。どちらでも、妻の相続税はゼロです。
さて、妻(母)が死に、二次相続。その相続財産は(預金そのまま)。
①だと、共有持分40%、4,000万円と預金6,000万円で1億円。
②だと、配偶者居住権は消減でゼロ、預金6,000万円だけ。
夫が亡くなり、相続人は妻75歳(今の奥さん)と子(前の奥さんの子)。
法定相続分は各2分の1。財産は夫婦の自宅1億円と預金1億円です。
⇒ 妻「自宅は残して下さい。」
⇒ 子「自宅所有権1億円をどうぞ。私は預金1億円を頂きますから。」
⇒ 妻「預金も欲しい。生活していけませんから。」
⇒ 子「預金1億円を相続し、自宅を出てアパート暮しして下さい。私は自宅1億円をもらいます。」
⇒ 妻「住まいも預金も欲しいの!!!」
実の親子なら自宅共有等で解決できますが、前妻の子でそれは難しい。
これからは、配偶者居住権(家屋と敷地)が使えます。
妻は、配偶者居住権(終身住む権利)評価額4,000万円と 預金6,000万円を相続。
子は、居住権付自宅所有権評価額6,000万円と預金 4,000万円を相続します。
配偶者居住権は妻死亡で消減し、子の自宅所有権は完全な所有権になります。
来年4月開始の配偶者居住権。
その消滅時課税が7月8日に通達として公表されました。
自宅土地建物1億円。妻75歳には配偶者居住権。所有権は子が相続します。
相続税上で、妻の配偶者居住権は4000万円、子の所有権6000万円とします。
そして妻(母)が死亡します。居住権消滅で土地建物への制約は消滅し、子は自由に1億円で売れます。
子は配偶者居住権消滅益を享受したのです。所有権の価値が6000万円から1億円に上ったのです。
心配は「そこへの課税はあるか?」でした。
結論、「死亡なら課税の心配は不要!」。4000万円は非課税です。
しかし、母による居住権放棄・母子合意での無償解約での居住権消滅なら母から子へ贈与税が課税されます。
贈与税対象額は、「消滅直前の配偶者居住権価額」。
当初4000万円でも時の経過や地価変動で3000万円かもしれません。
そして著しく低額の対価があれば・・・、 300万円払ったのなら・・・、差額が贈与税対象です。
それは対価として3000万円を母に払えば贈与税課税なしということ。
民法1032条「配偶者居住権は譲渡することができない」ですが、対価ありへ現実対応できる通達です。
ただし、まだまだ心配です。「譲渡税課税はあるの?」、
「母子一括同時売却や収用なら売買対価は母子でどう分ける?」、「どう課税する?」
配偶者居住権は、二次相続の相続税節税スキームとして流行るでしょう。
本来の配偶者居住権の創設意義と関係なく節税目的で・・・。
(週刊税務通信2019.7.15)
それではこの配偶者居住権、相続税法上はどのように評価するのでしょうか・・・?
先ずはこの居住権を士地部分と建物部分に分け、それぞれの評価額を算出した上で、それの合計額が配偶者居住権の評価額となります。
これはちょうどマンションの評価に当たって、マンションを土地と建物に分け、
それぞれの合計額を以てマンションの評価額とするのと同様です。
まず、建物の居住権は建物自体の相続税評価額から、次の算式で計算した額を控除した額です。
控除額 = 建物の相続税評価額 ×(A)÷(B)×存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率
(A)= 残存耐用年数 - 存続年数
(B)=残存耐用年数
一方、土地の居住権は、
土地の相続税評価額 -(C)
(C)=土地の相続税評価額 × 存続年数に応じた民法の法定利率による複利現価率
と、ちょっと複雑です。
総じて、古い建物はあまり多額にはならず、土地も配偶者が高齢であれば、
相続財産として大きな比重は占めないように設定されています。
上記のケースで、いずれの場合も残された配偶者は、法律的に所有権を得ることが最大の狙いではないだろうと思われます。
住み慣れた家に、夫亡き後も住む事ができれば、大きな安心になるのではないのでしょうか。
その意味で所有権はないものの、自分が亡くなるまでそこに住み続けることができればいいのです。
その点に着目し、民法は完全な所有権を住み続けられる権利(配偶者居住権)とそれ以外に分けました。
その上で前者を財産価値的には小さくすることによって、配偶者が他の財産までをも取得し易くしたのです。
この民法の改正によって、相続税と言う税法でもそれぞれの権利をどのように評価するかが必要になってきました。
両者の合計額が完全な所有権と言う考え方です。
これは言ってみれば、更地を底地と借地権に分け、
この両者の合計が完全所有権である更地の価額になる事と、税法上の考え方は同じです。
配偶者居住権とは、被相続人が生前配偶者と共に起居していた土地建物に、
“相続後も配偶者が 所有権を有すること無く居住し続ける事ができる権利”です。
なぜこのような権利を創設する必要があったのでしょうか・・・?
(例)例えば次の事例で考えてみましょう。
遺産が居住用の不動産2,000万円と預貯金3,000万円、相続人は妻と子の2人の場合です。
(ケース①)
法定相続分で財産を分割しようと考え、合計5,000万円を1/2ずつ相続する前提です。
妻は不動産2,000万円を取得すると預貯金は500万円になってしまいます。これだけでは残された人生の生計費としては心配です。
預貯金が少額なのは、不動産が法定相続分である1/2の大半を占めてしまうためです。
(ケース②)
こんなケースも考えられます。
再婚の夫婦で、前妻の子が2人いるようなケースです。
再婚後、比較的短期間後に夫の相続があった場合でも、妻には1/2の法定相続権が生じます。
どれ程妻である期間が短くても、入籍していれば妻は妻。それを前妻の子は快く思わず、財産分けでもめる事はよくあることです。
それを理由に入籍を諦める方も、これまでにはたくさんいらっしゃいました。
それもこれも、不動産の所有権が財産の内に占める割合が大きいためなのです。
「配偶者居住権をどう考えるか・・・?」
民法改正で「配偶者居住権」という“権利”が創設されています。
それまで夫婦で住んでいた士地建物を、残された配偶者が相続するのは至って自然な事。
その土地建物の所有権ではなく、“居住する権利” だけを取り出して一つの権利としたのです。
なぜこんな事をする必要があったのか・・・?その背景と間題点について考えてみましょう。